海外旅行の予定を立てるときは、海外旅行保険への加入を検討する方が多いでしょう。
海外旅行保険は旅行中に生じた金銭的損失を補償するものですが、もし渡航先で地震や津波といった予測できない災害に遭遇して負傷したときは、治療費は補償されるのでしょうか?
この記事では、地震や津波、噴火などの自然災害における海外旅行保険の補償について解説します。
海外旅行の予定がある方、地震が心配される地域に行く予定の方は、ぜひ参考になさってください。
海外旅行保険加入のススメ
海外旅行保険の必要性
日本と環境や生活習慣が異なる国に行けば、普段は健康な人でもひどい食中毒を起こしたり感染症にかかる恐れがあります。道路事情が異なる地域では、いつ交通事故に巻き込まれてケガをするかわかりません。
日本と海外では医療制度が異なるため、現地でのケガ・病気の治療費や入院費などは高額になりがちです。
また、旅行中に財布やカードなどを盗まれて手持ちのお金がなくなってしまったり、逆に自分が誤って他人の物を壊して多額の損害賠償を求められたりすることもあり得ます。
そのようなときでも海外旅行保険に加入していれば、金銭的損害を補償してもらえるので安心です。
海外旅行保険ではこんなサービスも受けられる
金銭の補償だけでなく、各保険会社では次のようなサービスも提供しています。
日本語対応の24時間サポートサービス
各保険会社では、国内に24時間365日体制のコールセンター(サポートセンター)を設けています。日本語の通じない海外でトラブルが発生したとき、あるいは地震が発生して飛行機が欠航になったなど、困った時はいつでも相談できるので心強い味方です。
海外の日本人旅行客の多い主要都市にはアシスタンス会社を設置し、契約されているお客様からの問い合わせに直接あるいは電話で説明するサービスを実施しています。
現金不要で治療が受けられるキャッシュレス・メディカルサービス
病院で治療を受けた場合、治療費を自分で支払い、帰国後に保険会社に請求するのが一般的でしたが、現在は多くの保険会社が「キャッシュレス・メディカルサービス」を提供しています。
これは、保険会社と提携している医療機関で治療を受けると、治療費は保険会社から医療機関に直接支払われるシステム。医療費の高い国でも現金不要(キャッシュレス)で治療を受けることができます。大金を持ち歩く必要がない点でも安心です。
海外旅行保険の概要
海外旅行保険は、「海外旅行中の予測できないトラブルや偶然の事故に対して保険金が支払われるもの」です。
海外旅行中とは、「海外旅行目的で住居を出発してから旅行を終えて帰宅するまで」を指し、これが保険期間(補償の期間)となります。
海外旅行保険には、出国当日に空港の自動販売機で加入することもできますが、自宅から空港へ行くまでの間に事故に遭ったときでも補償対象となるので、万一のことを考えて出発前日までには加入をすませておきましょう。
海外旅行保険の補償内容
補償内容は保険会社によって異なります。ここでは、損保ジャパンの「新・海外旅行保険【off!(オフ)】」の基本プランを例に補償内容を見ていきましょう。
新・海外旅行保険【off!(オフ)】基本プラン
補償項目 | 補償内容 |
---|---|
傷害死亡 | 保険期間中の事故によるケガが原因で、事故発生日から180日以内に亡くなった場合 |
後遺障害 | 保険期間中の事故によるケガが原因で、事故発生日から180日以内に後遺障害が生じた場合 |
治療費用※ | 保険期間中のケガや急病で治療を受けた場合。ただし、事故発生日から180日以内の治療費が限度 |
疾病死亡※ | 保険期間中に発症し、期間終了後72時間(3日)以内に医師の治療を開始し、30日以内に亡くなった場合 |
救援者費用 | •保険期間中にケガや病気で3日以上続けて入院し、家族が現地へ駆けつける際の渡航費・宿泊費など •渡航先で遭難し、捜索チームや救援チームを派遣したときの費用。移送用のチャーター機や医療費など |
賠償責任 | 誤って他人にケガを負わせたり第三者の財物(ホテルの備品や店の商品なども含む)を破損したりして、 法律上の賠償責任を負った場合の損害賠償金及び訴訟費用 |
携行品損害 | 身の回りの持ち物が盗まれる、壊れる、偶発な事故で損害を受けた場合の補償 (補償金額:持ち物1つあたり10万円を限度にその時点の時価または修理費用のどちらか低い方) |
航空機寄託手荷物遅延等費用 | 航空会社に預けた手荷物が渡航先へ6時間以上遅れて到着した場合、 やむを得ず購入した身の回り品の費用を補償(10万円まで) |
※治療費と疾病死亡は、以前から治療を受けている持病は補償対象外。最近は「新型コロナウイルス感染症」も補償の対象となり、「新・海外旅行保険【OFF】」には、追加料金なしで「指定感染症追加補償特約」が自動的にセットされます。新型コロナはほかの病気と違って潜伏期間が長いため、補償の対象となるのは保険期間中に感染し、期間終了後30日以内に医師の治療を開始した場合とされています。
海外旅行保険は地震や津波による損害も補償の対象?
旅先での地震や津波・噴火などの自然災害は非常に心細いものですが、海外旅行保険に加入していれば地震などが原因のケガや病気、携行品の損害は補償されるのでしょうか?
地震でのケガや急病も旅行中の傷害と同様に扱われる
海外旅行保険では、地震や津波などの自然災害が原因でケガを負った場合も、必要な治療費や救援者費用が補償されます。
また、他人にケガを負わせたり物を壊したりした場合の賠償責任、身の回りの持ち物が壊れたり盗まれたりした場合の携行品損害も、地震などが原因であれば保険会社の規定に則って保険金が支払われます。
国内旅行保険との違い
日本国内での旅行を対象とした「国内旅行傷害保険」は、海外旅行保険と違って地震や噴火、津波などの自然災害が原因のケガは補償対象にはならず、骨折をしても治療費は支払われません。
日本国内の旅行で地震や津波によるケガの補償を受けたい場合は、基本の補償に「天災危険補償特約」を追加する方法があります。これは地震や津波、噴火によるケガを補償するもので、オプション特約となっています。
地震や噴火で飛行機が飛ばない場合の補償はどうなる?
大型の地震が発生した場合や火山が噴火した場合は飛行機が欠航となり、そのまま現地に滞在せざるを得ないことがあります。また地震などで飛行機が遅延して旅行日程が大幅にズレてしまうことも考えられます。このような場合、延泊や遅延にともなう費用は海外旅行保険で補償してもらえるのでしょうか?
こんな費用は地震などの自然災害では補償されない
海外旅行保険の基本プランに組み込まれている「航空機寄託手荷物遅延等費用(上表参照)」は、地震や噴火などの自然災害の場合は補償の対象にはなりません。
海外旅行保険のオプション特約として「航空機遅延費用」があります。これは搭乗予定の航空機が欠航・運休になったことで発生した費用(宿泊費や交通費、食事代、予約していたイベントのキャンセル料など)を補償するものですが、これも地震などが原因の場合は対象外です。
保険期間の自動延長は地震でも適用される
現地で地震などの自然災害に遭い、搭乗予定の交通機関が遅延、運休、欠航となり帰国日が延びてしまう場合は、保険会社が妥当と認める範囲で海外旅行保険の「保険期間」が延長されます。
地震などが収束して空港閉鎖も解除されたら最も早く帰国できる飛行機を手配することを条件に、手続きなしで自動的に延長されるもので、自動延長はほとんどの保険会社が72時間(3日間)を限度としています。
72時間を超える場合は、延長前の期間を含めて最大92日間延長することができますが、この場合は延長手続きが必要です。
旅行変更費用補償特約で補償を受けられる場合も
海外旅行に出発する直前に渡航予定地で大地震や噴火が発生したため旅行を中止するという場合、もしくは旅行中に地震などに遭い、旅行を切り上げて帰国することになった場合は、旅行会社へすでに支払っている費用を払い戻しすることはできません。
そのような損害を補償するのが海外旅行保険に付けられる「旅行変更費用補償特約」です。具体的には、出国中止や中途帰国によって発生するキャンセル料、違約金、渡航手続費用、航空運賃等交通費、宿泊費、その他旅行会社に支払った費用などが対象となります。
旅行変更費用補償特約は、海外旅行保険の基本プランにオプションとして追加する補償です。地震や噴火はいつ起こるかわからない天災だからこそ、渡航先の地震情報などもよくチェックしてどのような補償が必要か十分に検討する必要があります。
なお、旅行変更費用補償特約は地震などの自然災害に遭遇したときだけでなく、下記のような事由によって出国中止または途中帰国を余儀なくされた場合も補償の対象となります。
- 日本の外務省から、渡航先に対する退避勧告や渡航中止勧告が出されている場合
- 被保険者の配偶者もしくは3親等以内の親族が死亡、もしくは危篤状態になった場合
- 急激かつ偶発的な外来の事故で被保険者の捜索・救助活動が必要と警察などによって確認された場合
- 被保険者の自宅および家財が火災、水害、雪害、飛来物などによって倒壊した場合
この旅行変更費用補償特約は、地震や噴火のニュースなどを見て「地震が怖いから海外旅行をやめたい」といった気分的な理由や、以前から患っている病気が原因で旅行を取りやめる場合は補償対象外です。
クレジットカード付帯の海外旅行保険では地震対応は不十分?
クレジットカード付帯の海外旅行保険は、加入手続きが不要なので便利です。ただし、カード付帯の海外旅行保険には「自動付帯」と「利用付帯」の2種類があり、補償の適用条件が異なります。
自動付帯のカードは所有しているだけで補償が適用されますが、利用付帯の場合はカード会社が指定した費用(航空運賃やツアー代金など)をそのクレジットカードで決済することが条件となっています。
クレジットカード付帯海外旅行保険の補償内容
カード付帯の海外旅行保険も、補償項目は保険会社が販売する海外旅行保険と基本的には変わりません。地震や津波、噴火などの自然災害が関連する損害についてもほぼ同じです。
ただし、カード付帯の海外旅行保険は、疾病死亡の補償がなく、治療費用も保険会社の治療費用より安い金額に設定されているのが通例です。
カード会社や年会費の有無によって補償内容に違いはあるものの、保険会社の海外旅行保険と比べると補償は十分とはいえません。
地震に備えて補償を手厚くするなら海外旅行保険をプラスする
地震や噴火などに備えて補償の手厚さを重視するなら、カード付帯の海外旅行保険に保険会社の海外旅行保険をプラスする方法があります
。たとえば、カード付帯の海外旅行保険に「新・海外旅行保険【off!(オフ)】」のオーダーメイドプランを上乗せした場合、万一地震などでケガをして高額な治療費がかかった時も、下表のようにカード付帯の治療費を十分補うことができます。
補償項目 | クレジットカード | 海外旅行保険【off!】 | 補償の合計 |
---|---|---|---|
傷害死亡・後遺障害 | 2,000万円 | 500万円 | 2,500万円 |
疾病死亡 | ー | 2,000万円 | 2,000万円 |
治療費用 | 200万円 | 1,500万円 | 1,700万円 |
賠償責任 | 2,000万円 | 5,000万円 | 7,000万円 |
携行品損害 | 20万円 | 20万円 | 40万円 |
救援者費用 | 200万円 | 1,500万円 | 1,700万円 |
航空機寄託手荷物遅延等費用 | ― | 10万円 | 10万円 |
まとめ
海外旅行保険とは海外旅行中のトラブルによる損害を補償する保険であり、地震や津波、噴火などの自然災害が原因となって発生した損害に対しても保険金が支払われます。
地震や津波といった天災は予測できないものですが、海外旅行保険に加入していれば補償は受けられるので、高額な入院治療費の心配をする必要がありません。
外務省でも、海外旅行保険に未加入の日本人旅行者が思いがけないケガや災難で多額の損害を被っていることを報告し、海外に行くときは必ず海外旅行保険に加入するよう呼び掛けています。
外務省では「たびレジ」という海外安全情報配信サービスも提供しています。これに登録しておくと、現地の治安情報はもちろん、地震や津波・噴火などが発生したときの緊急情報をメールやラインで受信することができます。
登録の仕方は簡単ですから、海外旅行保険に加入するとともに、たびレジへの登録も済ませることをおすすめします。